■思い付くままに、革の事を


諸事、識っている事は知っている、識らない事は知らない…という事を痛感する、この頃。 なんだか、養老孟司さんみたいになりましたが、要は知らないことが多すぎるということです…。
これから、革についての四方山話をしていくにあたっての、心境なんです。
この20数年、革に従事して得た知識や思い入れ、感じること等を、勝手にあれやこれやと申しますので、面 白いとお思いの諸氏は、たまに覗いてみてください。できるだけ、解りやすく、誤解のないように、正確に、と思うのです…が、きっとだらだらの、間違いだらけの、怠けた世間話になることでしょう… できましたら、感想や「それは違うぞ…」など、メールなどでお教えいただければ幸いです。

■革と司馬遼太郎…                  平成17年8月28日


 

司馬遼太郎著「胡蝶の夢」、この本は徳川政権の崩壊を、権力者では
なく蘭学という学問を学んだ若者たちの眼を通して、重層的に映し出し
た歴史長編ですが、第四巻始めに皮革に付いての記述があります。 
主人公・松本良順…幕府若年寄・立花出雲守(種恭)…最後の将軍・
徳川慶喜…町医富士三哲・三河松助…穢多頭・弾左衛門……革に
まつわる、悲しい江戸の歴史に終止符を打とうとした人達。その中で
司馬さんは「人外の人だという、この世に存在しないもの、というふしぎ
な思考法があった。」また「いわれなく被差別者を創り出した上に、
いわれなく不浄とした。」とも云っています、機会が有れば是非読んで
いただきたい一冊です。 一部ですが、次回紹介したいと思います。



■江戸時代の革…                   平成17年8月26日


 

江戸時代にどんな種類の革が使用されたのか…先日、例外としてと、
書きましたが、 その辺は、今一度詳しく今調べ中です、後日報告。 
例えば、日本を代表する独特な鞣し法で “姫路白鞣し革” 
(牛馬皮を川水に浸け脱毛し 菜種油を塗ってもんでつくる)や  
”甲州印伝革“ (鹿皮の吟面を削り取り、脳漿などで鞣し いぶして
色付けする)がありますし、かなり色々な種類の革を利用していたよう
ですが 絶対量が狩猟民族よりは少なかったのと、お上に管理され
ていましたから。
     参考:(社)日本タンナーズ協会刊「LEATHER HAND BOOK」



■今日の作品…                   平成17年8月25日


今日の「手ぬいクラブ教室」で完成した、勇先生の作品です。
革は最近、珍しく手に入った “バッファロー” の革です…
3ミリ厚なのに、腰がありしなやかで、ナント云っても、その吟面の
自然なシボが素晴らしいです…自然素材=革…と云う感じ
がたまりません (革の素材感を伝えられないのが残念です)。
制作日数3日だそうですが、貴方もチャレンジしてみませんか…
自由で楽しい教室です!
 



■革の産地…                      平成17年8月23日


 

革工場や卸の纏まって有る所…東京(台東区)、和歌山、姫路
栃木、大阪(浪速区)等、 ある程度決まった地域に集まっています。
これには日本独特の歴史的背景に依るものです。これからの話は
一度では無理なので、少しずつ続けたいと思っていますが、 今日は
プロローグとして…皆さんご存じのとうり、江戸時代も体制が固まるに
つけ儒教、仏教をその思想的、日常生活規範の基としましたね。
その為、 動物をむやみに殺傷したり、食らう事はタブーとされ
例外として、鹿革は流通し使用されていました(例外と云えば、
三味線の皮、太鼓の皮もありますが)……続く


■植物タンニン鞣し…                平成17年8月12日


タンニンを主体として使用する鞣し方法。古くから行われている鞣し
方法で、現在では ワットル、ケプラチョ、などの植物タンニンエキスが
使用されている。この鞣しの革 はクロム鞣革に比べて堅牢であるが
伸び及び弾性が少なく可塑性に富む。
タンニンの皮への浸透が遅いため、クロム鞣しに比べて鞣しに時間が
かかる。 底革、ぬめ革、クラフト革(手芸用革・タンロー)などの製造に
利用されている。(Vegetable Tannage 革および革製品用語辞典
光生館)      ※鞣す=なめす 



■革にアイロン…


革にアイロンをかけても良いですかと、昨日聞かれました…?
大丈夫ですよ。  衣料の場合、縫製後アイロン掛けします。
表から(吟面)掛ける場合は、あて布をして130〜150度C
スエードはブラシデ毛並みを揃えてから、あて布をした100〜110度C
注意することは @できるだけ上から押さえるように掛け、むやみに
横滑りさせないように注意する。 A 水分(霧吹き)は、皮革を硬化
させる 恐れがあるので避ける。(日本皮革技術協会) 
衣料用等くらいの厚みの 革では有効ですが、あまり厚いと効きにくい。
つまりオイル革など無理でしょう。


■漉き加工


革と布の扱いで、一番違うところは “漉き”= “すき” と云って薄く
する加工が 必要な事でしょう。 2枚、4枚と重なる部分は厚ぼったく
なるので、どうしても この作業が必要になりますね 。  (革は、表面を
  “吟” と云って0.3ミリくらい まで薄く漉き加工することができます。
  その下の部分を “床” と云って成牛革で5〜6ミリくらいの厚みが
あります。) 漉く為の道具が有りますが …これは、ウヲの目取りや
果物の皮むき器なんです。これで根気よく裏側を薄く漉い て下さいね
革工芸の大切な作業の一つです。

■漉き加工A


プロ用に、薄くする機械もあります、30万くらいします。 これだと、
簡単に漉く こっとができますが、技術を要するのと、自分の指まで漉
き込んでしまう危険を 伴います。 また、1枚全部を好みの厚みに漉
くマシーンがあり、これに携わる職業 の人を、「漉屋さん」と呼んで
います。  革業界はこの「漉屋さん」無しでは考えられないでしょう 。
機械は一千万円前後するそうで、デジタル式になってるとはいえ
やはり最後は “感 ” だそうです。  この職種は当然、革工場や卸
の纏まって有る所にしま存在しま
せん…

■最近の「ヌメ」革との表現について


最近、若い方から「ヌメ、ぬ め」という言葉を、よく聞きます。
「ヌメ、ぬめ革、Case」とは、植物タンニン鞣し(なめし)を行い、仕上げを施していない牛革。かばん、ベルト、袋物などに使用される、と云うのが学術的は解釈です(日本皮革技術協会)。手芸用の革としても、主に使っています。この革は「牛タンロー」と呼ぶのが一般 的です。肌色の革=ヌメ、オイル革=ヌメとの使用が見受けられますが、最近のマニアックな雑誌やネットでの情報を、間違って解釈したり混同して使っている場合が多いように感じます。ちょっと、難解でしたでしょう…次は、簡単面 白い話にします…。

■「革へん」手帳


14,15年前に「革へん手帳」と云う小冊子がありました(日本タンナーズ協会編)。面 白い冊子で、革偏(ヘン)で出来た漢字をもとに、読み方から、それにまつわる革の話が載っていて、たいそう役だったものです。今はどこへ行ったやら。
“靴”は「くつ」、“鞄”は「かばん」、簡単ですよね。
では“鞣す”は? 「なめす」です。「“皮”に化学的ならびに物理的処理操作により、種々の実用性を持った“革”に不可逆的に変えること」をいいます。(総合皮革科学より)

■植物タンニン


「ヌメ」のところで、出てきた“植物タンニン”の話です。
植物の種々の部分の(葉、樹皮、木質部など)に含まれる収れん性のある物質の総称で、いわゆる“渋”です。 あの、柿の渋のシブのことですね。ですから、牛タンローの事を「渋革」と云ったりします。昔は(化学技術の未発達の時代)は植物タンニンしか無かったのですが、最近は、合成タンニンが主のようです。書物にも、あまり、どの植物から抽出したものが多いのか書かれてないので、植物の名前を探すのは大変でしたが、やっと見つけました。“ミモザ”や“マングローブ”がそうです。これなら知った樹木ですよね!

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